ベッドフレームを選ぶ時、あなたは何を基準にしていますか。
デザイン、価格、それとも収納力でしょうか。
実は、フレームの「素材」に注目することで、あなたの理想の寝室作りは、もっと的確で、もっと楽しいものになります。
木の温もり、金属のシャープさ、レザーの高級感。
それぞれの素材が持つ物語を知れば、ベッド選びは、もっと奥深くなるはずです。
このコラムでは、主要な素材ごとの特徴と、あなたのライフスタイルに合わせた選び方のコツを、専門店の視点から丁寧にご紹介します。
温もりと安らぎの木製フレーム パイン材や桐材の特徴
いつの時代も、ベッドフレームの王道であり続ける木製フレーム。
その理由は、私たち日本人の感性に深く響く、自然素材ならではの魅力にあります。
天然木ならではの温かみと安らぎ
木製ベッドの最大の魅力は、やはり、その「温かみ」と「安らぎ」でしょう。
天然木は、視覚的にも、そして実際に触れても、人工素材にはない、温もりを感じさせてくれます。
美しい木目は、一つとして同じものがなく、それぞれが個性を持っています。
その自然が作り出した模様は、眺めているだけで心を落ち着かせ、リラックスさせてくれます。
寝室という、一日の疲れを癒やすためのプライベートな空間に、この自然の温もりがあること。
それは、質の高い睡眠へと誘う、大切な要素となります。
木製フレームは、どんなインテリアスタイルにも不思議と馴染む、普遍的な魅力を持っています。
使い込むほどに色合いに深みが増し、味わい深くなっていく。
長く、大切に付き合っていける、人生のパートナーのような存在。
それが木製ベッドなのです。
代表的な木材 パイン材と桐材と檜材
木製ベッドと一言で言っても、使われる木材によって、その特徴は様々です。
代表的なものをいくつかご紹介しましょう。
「パイン材(松)」は、比較的柔らかく、加工がしやすいため、多くのベッドに使われています。
明るい色合いと、はっきりとした節が特徴で、カントリー調や北欧風の、ナチュラルで温かみのある雰囲気を演出します。
「桐材」は、日本の気候風土に非常に適した木材です。
湿気を吸ったり吐いたりする優れた調湿機能を持ち、ベッドを湿気から守ってくれます。
木材の中でも非常に軽く、防虫効果があることでも知られており、特にすのこ部分の素材として最適です。
「檜(ひのき)材」は、日本を代表する高級木材です。
美しい木目と、優れた耐久性に加え、その清々しい独特の香りは、森林浴のようなリラックス効果をもたらします。
まさに、寝室に最適な木材と言えるでしょう。
無垢材と突板の違いと見分け方
木製ベッドを選ぶ際、知っておくと便利なのが「無垢材」と「突板(つきいた)」の違いです。
品質と価格に大きく関わってきます。
「無垢材」とは、丸太から切り出した、天然木そのものを加工した木材のことです。
非常に頑丈で、傷がついても削って修復することができ、使い込むほどに味わいが増します。
まさに本物の木の塊であり、最も贅沢な仕様ですが、その分、価格は高価になります。
「突板」とは、木材を薄くスライスしたシートを、MDFや合板といった芯材の表面に貼り付けたものです。
見た目や手触りは、無垢材とほとんど変わりませんが、無垢材に比べて価格を抑えることができます。
反りや割れが起きにくいというメリットもあります。
見分け方の簡単なコツは、家具の「角」を見ることです。
木目が角を越えて繋がっていれば無垢材、角で木目が途切れていたり、違う模様になっていたりすれば突板である可能性が高いです。
シャープでモダンな金属製フレームのメリットとデメリット
スチールなどの金属で作られた、金属製(スチール)ベッド。
そのシャープでモダンな佇まいは、木製やレザー製とはまた違った、独特の魅力を持っています。
メリットとデメリットを知って、選択肢の一つに加えてみましょう。
メリット シンプルで圧迫感がなく丈夫
金属製ベッドの最大のメリットは、その「軽やかさ」と「丈夫さ」です。
細いパイプやフレームで構成されているデザインが多いため、視線が抜けやすく、ベッドの向こう側が見えます。
クイーンベッドのような大きなサイズでも、お部屋に圧迫感を与えず、すっきりとした印象を保つことができます。
スペースが限られた寝室にもおすすめです。
そして、その華奢な見た目に反して、金属製フレームは非常に頑丈です。
木製のように、湿気による反りや割れの心配もありません。
比較的、価格が手頃なものが多いのも、嬉しいポイントです。
シンプルで、開放感があり、丈夫で、リーズナブル。
これが金属製ベッドの大きな魅力です。
デメリット きしみ音や冷たい質感
金属製ベッドには、いくつかのデメリットも存在します。
最もよく聞かれるのが「きしみ音」の問題です。
長く使っていると、フレームを連結しているネジが緩み、寝返りを打つたびに、ギシギシという音鳴りが発生することがあります。
定期的にネジを締め直すことで、ある程度は解消できますが、音に敏感な方は、気になるかもしれません。
素材そのものが持つ「冷たい質感」も、デメリットと感じる方がいます。
冬場に、フレームに肌が触れた時の、ヒヤッとする感触が苦手だという声も聞かれます。
寝室には温かみを求めたい、という方には、少し無機質に感じられるかもしれません。
これらの点を許容できるかどうかが、選ぶ上でのポイントになります。
インダストリアルやアンティーク調のデザイン
金属製ベッドは、特定のインテリアスタイルを目指す際に、絶大な効果を発揮します。
黒く塗装された、無骨なスチールパイプのベッド。
工場や倉庫のような雰囲気を演出する「インダストリアルスタイル」に、まさにうってつけです。
レンガ調の壁紙や、古材を使った家具と合わせれば、ニューヨークのロフトのような、格好いい空間が完成します。
白く塗装され、ヘッドボードやフットボードに、曲線的な美しい装飾が施されたアイアンベッド。
ヨーロッパの片田舎を思わせる「アンティーク調」や「フレンチシャビー」なスタイルに完璧にマッチします。
レースや花柄のファブリックと合わせれば、ロマンチックで、女性らしい寝室を創り出すことができます。
金属という素材だからこそ表現できる、独特の世界観があるのです。
高級感と重厚感を演出するレザー製フレームのお手入れ
寝室を、まるでホテルのスイートルームのような、ラグジュアリーな空間に変えたい。
そんな願いを叶えてくれるのが、レザー製ベッドです。
その魅力とお手入れ方法について解説します。
なぜレザーは高級感があるのか
レザー素材が持つ、しっとりとした艶と滑らかな質感は、それだけで空間に高級感と重厚感をもたらします。
ヘッドボードにもたれかかった時の、柔らかなクッション性も、他の素材にはない魅力です。
その佇まいは、まるで高級ソファのよう。
ベッドを、単なる寝具から、くつろぎの時間を過ごすための、特別な家具へと昇華させてくれます。
この非日常的な特別感が、レザーベッドが高級に見える理由なのです。
ヘッドボードにボタン留めが施されたデザインは、クラシックでエレガントな雰囲気を演出し、寝室の格を一段と引き上げてくれます。
合皮PUレザーのお手入れは驚くほど簡単
「レザーはお手入れが大変そう」と思われがちですが、現在主流の「合皮(PUレザー)」は、驚くほどお手入れが簡単です。
表面が樹脂でコーティングされているため、水分や汚れをほとんど通しません。
普段のお手入れは、乾いた柔らかい布でホコリを拭き取るだけで十分。
ジュースなどをこぼしても、すぐに拭けばシミになる心配もありません。
汚れが気になった場合も、薄めた中性洗剤を固く絞った布で拭き、その後、水拭きと乾拭きをするだけ。
本革のように、専用のクリームを塗り込む必要もありません。
このメンテナンスの手軽さが、合皮レザーベッドが広く支持されている大きな理由です。
本革の場合の注意点とメンテナンス
もし、あなたが「本革」のベッドを選んだなら、それは、家具を「育てる」という楽しみを手に入れたということです。
本革は、定期的なメンテナンスが必要です。
人間の肌と同じで、乾燥するとひび割れなどを起こすため、半年に一度ほど、革専用の保湿クリームを塗り込んであげる必要があります。
この一手間をかけることで、革は美しい艶を保ち、使い込むほどに味わい深い色へと変化していきます。
これを「経年変化」と言います。
手間はかかりますが、自分だけのベッドに育てていく喜びは、何物にも代えがたいものです。
本物の質感を求めるこだわり派の方にこそ、選んでいただきたい素材です。
デザイン性と価格を両立するMDF化粧板フレームとは
現在のベッドフレームで最も多く使われている素材の一つ、「MDF化粧板」についてご説明します。
デザインの多様性と、手頃な価格を両立した、非常に賢い選択肢です。
MDFとは 木材を繊維状にしたエコな素材
MDFとは「Medium Density Fiberboard」の略で、日本語では「中質繊維板」と呼ばれます。
木材を一度、細かい繊維状にまで分解し、それを接着剤で固めて、再び板状に成形した「木質ボード」の一種です。
木材の端材やリサイクル材を原料にできるため、森林資源を有効活用できる、環境に優しいエコな素材でもあります。
MDFは、密度が均一で、表面が非常に滑らかなのが特徴です。
塗装や、後述する化粧板を貼り付ける加工が、とても綺麗に仕上がります。
天然木のように、節があったり、反りや割れが起きたりする心配もありません。
強化プリント紙化粧板で多彩なデザインを実現
このMDFの表面に、木目や色柄を印刷した紙(化粧シート)を貼り付け、さらにその上から、傷や汚れに強い透明な樹脂でコーティングを施したものが、「強化プリント紙化粧板」です。
現在の印刷技術は非常に高く、本物の木と見紛うほどリアルな木目を再現することができます。
ウォールナットやオークといった高級木材の雰囲気を、手頃な価格で楽しむことができます。
木目だけでなく、真っ白や真っ黒、あるいはコンクリート調や石目調といった、多彩なデザインを、自在に作り出すことができるのです。
私たちが、様々なデザインのベッドの中から、好みのものを選べるのは、このMDF化粧板という技術があるからなのです。
メリットとデメリットを知って賢く選ぶ
MDF化粧板フレームの最大のメリットは、やはり、その「コストパフォーマンスの高さ」です。
多彩なデザインのベッドを、非常にリーズナブルな価格で手に入れることができます。
表面が硬くコーティングされているため、日常的な使用での傷や汚れに強いのも、嬉しいポイントです。
デメリットもあります。
それは、無垢材や突板のような、本物の木の質感や、経年変化の楽しみはないということです。
表面のコーティングが大きく剥がれてしまうと、中のMDFが水分を吸ってしまい、強度が落ちる可能性があります。
とはいえ、普通に使っている分には、全く問題ありません。
デザイン性を重視し、コストを抑えたい。
あるいは、数年後には、また違うスタイルのベッドに買い替えたい。
そんな方にとって、MDF化粧板のベッドは、非常に満足度の高い、賢い選択肢と言えるでしょう。
店主の解説
そのクイーンベッド、部屋に入りますか?「連結タイプ」という賢い構造と、搬入の真実
お二人でゆったりと眠れる、木製のクイーンサイズベッド。その広々とした空間は、何物にも代えがたい魅力です。しかし、その大きな夢を実現するために、お客様が、購入前に必ず知っておくべき、最も重要な事実があります。それは、現在主流のクイーンサイズベッドのほとんどが、一枚の巨大なベッドではなく、セミシングルサイズ(幅約80cm)のベッドを2台ぴったりとくっつけて使用する「連結タイプ」である、ということです。この構造を理解することが、搬入という最大の難関をクリアし、将来にわたって賢くベッドを使いこなす鍵となります。
■なぜ「連結タイプ」が主流なのか?
その理由は、ただ一つ、「搬入」の問題です。幅160cmの一枚もののマットレスや、重い木製フレームは、日本の一般的なマンションやアパートの、エレベーター、階段、廊下、そして寝室のドアを、物理的に通過できないケースが非常に多くあります。「買ったはいいけど、部屋に入らない」という、最も悲しい事態を避けるための、非常に合理的な答えが、この連結タイプなのです。パーツがセミシングルサイズに分割されているため、通常のシングルベッドと同じような感覚で、狭い通路でも、スムーズにお部屋まで運び込むことが可能になります。
■気になる「すき間」問題は、完全に解決できるという見解
連結タイプと聞いて、誰もが心配になるのが「真ん中のマットレスのすき間や段差」です。ご安心ください。私の見解では、この問題は、寝具の工夫で、もはや「弱点」ではなく、完全に克服できる「特性」です。
- すき間パッドを「埋める」:まず、2枚のマットレスの間にできる「谷間」に、T字型をしたウレタン製の「すき間パッド」をぴったりと埋め込みます。
- 大きなベッドパッドで「覆う」:次に、その上からクイーンサイズの大きな「ベッドパッド」を1枚、2台のマットレスをまとめて覆うように敷きます。
- 大きなボックスシーツで「固定する」:最後に、クイーンサイズの「ボックスシーツ」を1枚で全体に被せます。
この3ステップで、2枚のマットレスは物理的にしっかりと一体化され、どこに寝返りを打っても段差を感じない、一枚の広大なベッドが完成します。
私の見解は、こうです。搬入のリスクや、将来分割して使えるというメリットを考えた時、
ほとんどのお客様にとって、賢明な選択は「連結タイプ」です。そして、すき間の問題は、これらの工夫で完璧に解決できるのです。
二人で長く使うための「頑丈さ」。私が木製フレームに「すのこ」と「中央脚」を求める理由
温かみのある木製のクイーンサイズベッド。その上で、お二人が、毎晩、そして長年にわたって安心して体を預けるためには、デザインの美しさだけでは見えてこない、フレームの「頑丈さ」が、何よりも重要になります。店主としての私の見解は、その頑丈さの証は、ベッドの見えない部分である「床板の仕様」と「中央の支え」にこそ、如実に表れる、というものです。
■見解1:日本の気候において「すのこ仕様」は、もはや必須である
まず、日本の高温多湿な気候を考える上で、床板が「すのこ」であることは、もはや選択肢ではなく必須条件だと、私は考えています。人は、眠っている間にたくさんの汗をかきます。二人で眠るクイーンベッドでは、その量は単純に2倍以上。その湿気の逃げ道を確保してくれるのが、床板の「すのこ」です。もし、床板が隙間のない一枚板の「板張り」だと、マットレスの裏側にカビが発生する大きな原因となります。
私の見解では、すのこ仕様であることは、お二人の健康的な睡眠環境を定義するための、最低限の条件です。
■見解2:クイーンベッドに「中央脚」がないのは、致命的な欠陥である
次に、特にクイーンサイズ以上の大きなベッドで、その物理的な耐久性を決定づける、最も重要なパーツが「中央脚(センターレッグ)」の存在です。
クイーンベッドは横幅が160cmあります。この広い幅の中央部分は、マットレスと大人二人の重みが最も集中する、構造上の弱点となりやすい場所です。もし、この中央部分に支えがないと、長年の使用で床板が徐々にたわみ、マットレスが中央に向かって沈み込む「谷間」ができてしまいます。これは、不快な寝心地や、きしみ音の大きな原因となります。
品質の高いクイーンサイズフレームには、必ず、ベッドの中央を頭側から足元側にかけて縦に通る「センターレール」という補強の板があり、さらに、そのレールから床に向かって支える「中央脚」が付いています。この脚があるかないかで、ベッドの耐久性は全く異なります。私の見解では、中央脚のないクイーンサイズフレームは、長期的な使用を前提とした設計とは言えません。
すのこで「健康」を守り、中央脚で「安全と耐久性」を確保する。この二つの視点を持つことが、数ある商品の中から、本当に長く安心して使える一台を見つけ出すための、最も確実な方法です。
最高の木製フレームには、最高の寝具を。二人で快適に眠るための、究極の組み合わせという見解
最高の木製クイーンベッドフレームを選んだとしても、それだけでは、お二人の快適な眠りは完成しません。店主としての私の見解は、最高のフレームとは、最高の寝心地を生み出すための、あくまで最高の「舞台」であり、その上で最高のパフォーマンスを演じる「主役(寝具)」を選んでこそ、その真価が発揮される、というものです。ここでは、お二人の眠りを最高の時間にするための、寝具選びの秘訣を伝授します。
秘訣1:マットレスは「揺れの伝わりにくさ」で選ぶ
お二人で使うベッドのマットレスを選ぶ上で、最も重要な性能。それは、隣で寝ている人の寝返りの振動が伝わりにくい「独立コイル構造」であることです。
安価なベッドセットに多い「ボンネルコイル」は、コイル全体が連結しているため、パートナーの動きがベッド全体に伝わり、眠りを妨げる原因となります。
私どもが絶対的におすすめするのは「ポケットコイルマットレス」です。一つ一つのコイルが独立しているため、揺れがほとんど伝わりません。お互いの動きを気にすることなく、それぞれが自分の眠りに集中できます。クイーンサイズがもたらす、上質な眠りを実現するためには、必須の選択です。
秘訣2:「掛け布団の取り合い」問題を、根本から解決する
クイーンベッドは広々としていますが、それでも、夜中に無意識の「掛け布団の取り合い」が発生することがあります。これも、工夫次第で解決できます。
- 方法A:ワンサイズ大きい「キングサイズ」の掛け布団を使う
掛け布団の幅に余裕が生まれるため、寝返りを打っても、布団が引っ張られにくくなります。見た目にも、よりラグジュアリーな印象になります。
- 方法B:いっそ「シングルサイズ」の掛け布団を2枚使う
私の見解では、これが究極の解決策です。「布団の取り合い」が物理的に起こりえませんし、「夫は暑がり、妻は寒がり」といった、お互いの体感温度の違いも、それぞれが好きな厚みの布団を選ぶことで、完全に解決できます。日中は、上から一枚の大きなベッドスプレッド(ベッドカバー)を掛ければ、見た目も美しくまとまります。
私の最終的な見解は、こうです。本当におすすめのクイーンベッドとは、単体のフレームのことではありません。それは、
頑丈な木製フレームを土台とし、揺れないポケットコイルマットレスを乗せ、そして、お二人の眠りのスタイルに合った掛け布団を組み合わせた、睡眠システム全体のことなのです。
店主のつぶやき 木製 金属製 レザー製 クイーンサイズベッド素材別の特徴と選び方
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・レザーベッド
・ベッドフレーム
・ベッドサイズ
・ベッド
・木製 金属製 レザー製 クイーンサイズベッド素材別の特徴と選び方